|
外務省 平成21年度 日本NGO連携無償資金協贈与契約に基づく
「サヘル地域に初等教育普及事業」は、平成22年5月28日に全事業を終了いたしました。
事業・サイト:
マリ共和国 クリコロリジョン (クーラ、ドゥンバ、トウグニ コミュン人口約35,000人)は、首都バマコから北東へ約200kmの地域で、週2回運行される小型バスが唯一の交通機関である。
人々は、伝統的な農業を生業とし、年間降雨量が400~500mmで、充分な食料を得ることは出来ない。昨今の環境の悪化により農業の継続が困難になっている。降雨量が不足して食料を得ることが出来ない為、多くの若者は首都あるいは地方都市や海外へ職を求めて出稼ぎに行き、彼らの持ち帰るエイズが大きな問題となっている。この地域の教育施設は87ヵ村に3中学校と13小学校、加えて村立の小学校が約30校前後存在している。
しかし教育に対する両親の無理解の影響もあり、多くの子供は就学していない。またこの地域は無医村地帯で病気に罹患しても充分な治療を受けることが出来なく、風土病が蔓延している。
支援額総計:103,014ユーロ(13,356,692円)
事業の目的:
自然・社会現象が厳しく、平均識字率が3%にも満たなく、政府は義務教育性を敷いているが、教師や学校の不足、経済的な理由(義務教育でも両親の負担が必要)、親の不理解で学校教育を拒否、村間が遠く通学不可能である等の理由で未就学の子供たちが多い。
成人も殆どが教育を受けた経験がない。このような人たちが自らの力で、将来に向けて自立した生活を構築していく為に必要な手段である教育を普及することが目的である。
事業の内容:
以下の3項目が本事業の内容である。
1.カチョラ村小学校(4教室、トイレ、教官室)を建設、机、その他の備品を整備。
建設(鉄筋平屋建設)には約3ヵ月を要した。在校生数183人
建設後の運営管理は、カチョラ村小学校自主管理委員会が行っている。
経費 9,122,583円
2.成人と子供の為に4識字教室(4ヵ村)を建設。
未だ小学校が開設されていない村の内から4カ村を選び、文字を知らない成人と子供たちに部族語のバンバラ語を学ぶ識字教室を建設し、基礎的な教育を受ける場と機会を確立した。
建設後の運営管理は、各村の識字学習自主管理委員会が行っている。
経費 1,063,036円
3.その他、村の識字教室で指導する識字教師育成研修会を開催。
既存の識字教室を含めて、教師の出稼ぎによる不在や、病気、その他の事情で識字学習が滞ることのないように、村に常駐の教師を育成する目的である。
研修会は68ヵ村から315人の教師(男性・女性)が参加して13会場に分かれて研修を受けた。
研修後は国内同一の識字教師認定試験を受け、218人は合格、97人が不合格であった。
不合格者は次回開催される研修会に参加する。識字教師と認められた人は、村で教鞭を取ることが出来る。
経費 192,722円
事業の経過と成果:
1.カチョラ小学校建設
カチョラ村においては、バマコ市の建設業者に依頼して予定通りに小学校4教室、トイレ、教官室を建設した。
設備品となる児童用机やその他の備品類は、バマコ市からの輸送中に、悪路のために破損する可能性があるので、製作所が材料を村へ運び、作業員が村に数日滞在して校庭で製作した。
建設技術者と机の製作所の作業員がカ村に滞在して作業を行っている期間は、作業員の毎日の食事など多くを村人の協力に頼った。
小学校の完成と同時に「カチョラ小校自主管理委員会」が組織され、カラのスタッフによるワークッショプを行い、業務を認識して現在は活動を始め、人々に管理意識が芽生えている。
この自主管理委員会は代表以下、資金管理・会計担当の他に女生徒就学推進担当係等、全8人で構成されている。委員会役員はそれぞれが役の持ち場で活躍をしている。
2010年5月にトゥグニコミュン長、他村からの来賓を招き、村長以下、村の住民が参加して賑やかなタムタムの演奏と共に盛大な落成式典が行われた。
当校の教師は既に採用されている3人と校長と合わせて4人である。カチョラ小学校の建設は、カチョラ村のみならず近郊の村の多くの人々に強い印象を与え、2010年度の新入学1年生としてドンゲネ村、ソニブレ村、サナマニ村から就学を希望する親からの申し込みがある。
教師についても、他に2人の派遣をコミュンから教育庁へ申請中である。
マリ共和国では小学校及び中学校への就学は義務教育ではあるが、家庭の経済的な事情や居住地域に小学校が無く通学に遠距離であること、その他両親の教育に対する理解度などの問題もあり、多くの子供が通学できるとは限らない。
しかし、新しい小学校が建設されたこと、近年の初等教育の普及熱の高まりもあり、現在の生徒数は183人ではあるが、新学期を迎えた10月以降は238人(女児122人、男児85人) が予定でされていることが校長から話された。
日本政府が建設した学校コンパウンドであることは、表示板を建てて説明してある。
当事業による住民の反響:
人々の間に小学校を卒業できると出稼ぎに行った場合も良い職につけて有利であり、更に字を覚えるとコミュン(行政)にも就職可能である、などと考え、学校教育の重要さを理解する親が多くなってきた。その為か、子供を小学校へ就業させ、さらに中学校へ進級する児童も多くなり、それを望む両親も多くなっている。
マリ共和国では義務教育であっても中学への進級試験があり、2度失敗すると進級できないので、村間で中学への合格率が競争となり、学校へ進学することでエリート意識が高まり多くの関心が生まれている。また、村に不足する看護師や助産師、獣医になりたい子供もあり、それらの職業の資格も取れるようになると人々の間では噂に登っている。
他に依存しない、自立した生活の構築のための基礎として不可欠である教育について、上記のように多くの関心が払われるようになったのは、ここ2・3年のことである。
この芽を摘むことなく育んでいくことが重要であると考え、今回の事業の妥当性は非常に強かったと思われる。人々に多くの希望を与えているのは事実である。
カチョラ村では、今回建設されたこの新小学校を村の財産と考え、村民一致で大事にしている様子が伺える。子供を持つ母親たちは子供を遠くの小学校へ通学させなくても、近くで、また村内で勉強させることが経済的にも行動的にも安心であると喜んでいる。
今後は更に就学率が高まることは充分に予測される。
2.識字教室建設と識字教師研修会
トウグニコミュン内で数年前から要請のあった識字学習のための教室を建設した。
これは、資材を当事業資金にて購入し、建設は村の人たちの労働奉仕によるものである。
面積6m×7mで壁面に黒板を設置、机10脚(成人2人~子供4人がけ)、教科書(読み方/書き方 各20冊)、灯油ランプ1台、小黒板20枚、チョーク1箱、その他黒板塗装用ペンキ 等を給付した。
識字教室の面積は、2年前までは4m×6mであったが、近年は生徒数の増加と共に教室を広く建設することになった。
村では建設に先立ち、識字教室の建設場所を村民会議で決め、そして男性たちが労働を分担するようグループを組んで作業日程を決め、土レンガ製造から始まった。
女性たちには、セメント・レンガ造り時に必要な水汲みの作業が分担された。
また、外装はこの地域特有の雨季の強い風雨に耐えられるよう、四面の壁に針金を張りめぐらせてそこにセメントを塗り、外壁の剥奪を防ぐようにした。
人々はこの建設に参加することで建築技術を知ることができたと、喜んでいる。
これらの教室建設には、当事業費で資材としてセメント、砂、小石、屋根用トタン板、クギ、鍵を購入して連日スタッフが村の建設現場へ出向き、共同で作業をする等、進捗状況を監督した。建設には約2ヵ月を要した。
夜間の授業に必要な灯油ランプの灯油は、村の人たちの会費で賄う。同様に教師への手当て等についても識字学習自主管理委員会が村ごとに事情に合わせて決めている。
識字教室としての使用が基本ではあるが、事情によって村の公民館的な役割もこなし、村にとって非常に有効である。
今回建設した識字教室は次の村である(各村一ケ所ずつ)
・ンペブグー村教室 ・バラバン村(別名;キャーン村) ・バシブグー村 ・ファラコブグー村
小学校と違い、子供も大人もまた男女の区別無く学習できる識字学習は、公用語のフランス語の学習ではなく部族語(この地域ではバンバラ語)を学んでいるので、必ずしも実用に沿うわけではないが、これが起点となり子供や兄弟に教育のチャンスを与えるようになったことは過去の経験でも多かった例である。
識字学習に参加する村民は非常に増え、特に女性の参加の増加には目覚しいものがあり、以前の参加者数よりも倍近くが学習を続けている。
識字教師育成のための研修会は、2009年9月に15日間にわたり13カ所の会場を使用して、識字教師育成研修会が同時に開催された。研修会では新人教師育成と、既に教師となっている人の技術向上が目的である。
プログラムを組むのはすべてカラのスタッフである。会場の交渉、講師の依頼、最小限の教材の購入等である。過去の研修会は講師を町から招聘しなければ出来なかったが、現在はカラが育成した熟練した教師たちが講師を勤めるようになり、指導者が増えたので同時開催が可能である。これは、非常な進歩である。
研修会は、朝8時から12時30分までである。男性は自転車で会場まで来るが、女性は主婦が多く、赤ん坊を背負って何キロもの道を徒歩で通ってくる。
研修内容は基礎的な学習から、村人への教授方法も学んでいる。基礎面は殆どの人が既に理解しているので村の人たちへの教え方の研修が主であった。研修会終了後はすべての会場で試験を行い、成果を確認した。
試験の結果は約60%の人たちは合格であった。不合格者は次回の研修を受ける予定である。
今まで就学した経験が無く、字書を書けない読めない人たちにとって、この研修会を受講し、今後教師になるために勉強することは困難であると思われるが、皆、非常に積極的であり、熱心に学んでいた。
・現状・当事業による住民の反響:
この事業は大きな期待を持って進行し、事業終了時には地域の村の人たちやコミュン長から非常に感謝された。地域の人々の喜びは大きい。新しい小学校の建設は周辺の村々へ大きな影響を与え、人々の教育熱が高まってきたことは就学児童が増えていることでも証明される。
先日カチョラ村訪問の折には村長と校長から中学校の建設を依頼された。小学校の建設と足並みを揃えて進めている識字学習は、子供と共に学んでいるという意識を与え、また小学校の無い村では夜間には識字教室、昼間は小学校として使用されて、村で非常に重要な施設となっている。
特に女性たちが識字学習に熱心で出席者の70%を占めており、この識字学習は、女性貸付け事業の運営、適正技術部門、野菜園栽培部門、タマネギ保存庫の管理面でも有効に活用され、女性たちの励みとなり、意識改革が目立ち、男性同様に研修会へ出席することを望み、積極的に勉強するようになり、喜びを感じているようである。
|
|
|
識字学習光景1 |
|
識字学習光景2 |
|
新校舎で勉強する子供たち |
|
識字教科書 |
|
識字教室内部 |
|
カチョラ小学校建設を手伝う村の青年 |
|
建設中の教室 |
|
トイレの建設中 |
|
カチョラ小学校教員室 |
|
カチョラ小学校全景 |
|
カチャラ小トイレット全景 |
|
日本の支援が標示された看板 |
|
建設した識字教室 |
|